今回の訪問地はアメリカ・モンタナ州。
この国の石材は、基本的に国内市場へ供給されているため、日本で見かける機会は少ない。
弊社にとっても、アメリカへの石材買い付けは初めての試みだ。
長時間のフライトを経て、ロッキー山脈の麓、モンタナ州ボーズマン空港に到着した。
そこでまず目に留まったのは、空港ターミナルの内壁を覆う石材だ。
建築物にも使われる、良質な石材の産地に降り立ったことを実感する。
採石場は空港から車で約2時間。期待に胸が膨らむ。
この一帯はイエローストーン国立公園としても有名で、空港を出ると雄大な山々の景色と、見渡す限りの草原が広がる。
やがて、大草原の中に積み上げられた石の廃材が突如として目に入ってくる。
そのすぐ横の塹壕のような場所で、腕の長いショベルカーが、丁寧に石を削り採っていた。
地質学者でもある採石場のオーナーは、学術的な知見を基に、理想の厚みの石が採れる場所を探し当てているとのことだ。
当社が今回、輸入した石材はディープクリークウォーリングとホームステッドアンティークウォーリングの二種類だ。
ディープクリークはモンタナ州の北部、ロッキー山脈に連なる渓谷で採れる石材で、
他の州で採れるものよりも堅いことが特徴だ。モンタナ州内のみならず、アメリカ各地から引き合いがある。
もうひとつの石材、ホームステッドアンティークウォーリングは、
19~20世紀にかけて、入植者(ホームステッダー)たちが家の外壁として使用していた石材だ。
移住の際に広大な草原に放置され、その後何十年にもわたって大自然の中に留め置かれてきた。
現地ではそれを再利用し、現代の技術と組み合わせながら、当時の建物をリメイクするような取り組みも行なわれている。
これからの時代の、石積み文化の可能性を感じた。
現地の街を訪れると、石材を高く積み上げた建物が目に付く。
その外壁は、迫力があると同時に味わい深い。
地震の多い日本では、法律上の制約もあり、そうした建物は珍しいため、
アメリカの石文化が羨ましくも思えた。
ただ、採石場のアメリカ人オーナーは、「日本にも素晴らしい石積みの技術、石文化はある」と話す。
日本のお城などに見られる石垣や石塁、特に江戸時代以前に建てられた強固なものは、
海外でも認知されているようだ。
国を超えて、人々の意識に根付く石積みだということを、
オーナーの一言によって改めて感じさせられた。
日本にある石積みの魅力も同時に気づかされた訳だが、
時代が変われど、価値あるものを忘れずにありたい。
文:土方 海里