2021年12月01日

和洋どちらにも馴染む、石工職人が選ぶ銘石~気良石~

郡上おどりで有名な岐阜県郡上市。
日本の滝100選に選ばれた「阿弥陀ヶ滝(あみだがたき)」や推定樹齢約1800年の「いとしろ大杉」などの観光資源を有することでもよく知られる。
今回は、その郡上市の山奥、秘境とも呼べる場所で産出される“気良石„をご紹介したい。
石のふるさとといえば、外国の輸入石材の採石場や街並み風景を取り上げてきたが、
国産石材にも目を向け、その良さをお伝えしたいと思う。
昨今、各業界で人材不足を危惧する声が高まっている。とりわけ庭の業界では、職人不足が著しい。
どんなにすばらしいデザインや素材が揃っても、それを具現化できる職人がいなければ、
庭づくりの志を叶えることはできない。素材を採掘する人たちも同じくらい欠かせない存在である。
しかし、この業種でも人材不足は否めない。「昔はやっていたが今では廃業した」。
こんな話を耳にすることも決して珍しくない。
そんな中でも筆者は隠れた銘石を探し求め、石のふるさとに足を運ぶのである。

香川県産の庵治石のように有名な石はご存じの方も多いだろう。
しかし、郡上市で採れる“気良石„こそ、まさに隠れた銘石であり、
知名度では劣っても石の魅力では決して引けを取らないのである。
気良石は“石積み„の銘石と言っても過言ではないと筆者は思っている。
その理由に迫るべく、石工として気良石の採掘に長く携わる山田氏にお話を伺った。

気良石の採石場

気良石の採石場

■特徴と魅力

一見地味でハデさはありませんが、確かな存在感があり表情(表面の凹凸)が豊かです。
石の色が主張し過ぎないので、さまざまなシーンで庭に馴染みやすい。
ウブ肌で湿度があれば、苔が乗りやすいことが特徴です。また、
石としては柔らかく割る、斫るなどの加工が容易なため、施工性が高いといえます。

■石の選別について

自分が石工のため、変な石を使うと現場で苦労する職人の姿が思い浮かびます。
よって、できるだけ使いやすい(小加工で済む)石を出荷するよう心がけています。

■苦労していること

年間約500tの採掘量ですが、山地のため天候に左右されやすく、採掘できる期間に限りがあります。
また、石の選別する人を増やしたいが、石積みの心得がないと難しいので人手不足となっています。

■気良石へのおもい

気良石は、私が一目惚れして採掘し始めた石です。このおもいの強さが、
気良石を使っていただいた方々への感謝の気持ちにつながっています。
これからもすてきな作品を作り続けたいと思う気持ちでいっぱいです。

(以上、山田氏談)

気良石が積みやすいと評判なのは石材の形状だけではなく人の手による選別があるからに違いない。
まさに職人の“気„質と石材の“良„質がかけ合わさった気良石の名の通りではないだろうか。

文:河村 和将

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